コンパニオンプランツとしてのヘアリーベッチ

庭で咲いたヘアリーベッチ-2020/05/12
庭で咲いたヘアリーベッチ-2020/05/12

ヘアリーベッチについて

ヘアリーベッチはカンキツ類のコンパニオンプランツとしてよく挙げられる植物のひとつです。カンキツだけでなく、他の果樹でも草生栽培を試みる際には利用されることが多いです。

ヘアリーベッチの種を購入する場合、キロ単位の大容量でも売られていますが、以下のように少量でも売られているので、個人宅の庭でちょっと使ってみたい場合も手を出しやすいと思います。

和名はビロードクサフジ

和名はビロードクサフジとなりますが、それより毛が短く密度が薄いナヨクサフジもヘアリーベッチと呼ばれ販売されています。まあ、どちらでも用途・効果はあまり変わらないんだろうと思います。

生育サイクル

マメ科の一年草で、一般地では秋(9~11月)に播種し、発芽後の冬にゆっくりと生長しながら越冬します。春播き(3~4月)も可能なようですが、冬の間に根粒菌が着生することを考えると、効率がよいのは秋播きとなります。春先になると急生長し5~6月頃に開花、7月以降に枯れていきます。

つる性の植物で草丈は100~200cm程度になり、ほふくした場合の高さは50cm程度になります。

カンキツ栽培への影響

以下、一般的な内容とともにカンキツ栽培への影響という観点からまとめてみます。間違いや不足があればご指摘いただけますと幸いです。

カンキツ栽培へのメリット

雑草の抑制

ヘアリーベッチは初期育成が旺盛で雑草との競合に強く、雑草を抑制する効果が非常に高いです。また、ヘアリーベッチには主にシアナミドによるアレロパシー作用があります。これらにより、枯れるまでの間はほぼ完全に雑草を制圧できるようです。さらに、枯れた後は敷き藁状態になり地面が被覆され、夏の雑草もある程度抑制できます

なお、シアナミドは化学肥料の石灰窒素の成分でもあります。ヘアリーベッチが生合成した化学物質は土壌に残留することはないようなので、後作への影響を心配することはありません

化学肥料の低減

ヘアリーベッチはマメ科植物の特徴である根粒菌により、空気中の窒素を固定し土壌を肥沃にします。ヘアリーベッチ自体は緑肥としてすき込んでもよいですが、そのまま枯らして敷き藁状態で放置しても、地際でゆっくり分解されて有機物が補給されます。結果として化学肥料の低減効果が期待できます。

益虫による害虫対策

ヘアリーベッチの花の蜜を求めてハチが集まり、茂みはテントウムシやクモといった益虫の住処となります。ヘアリーベッチには花外蜜線がありアブラムシを誘引しますが、その分テントウムシも増えます。テントウムシはアブラムシだけでなく他の害虫も捕食します。こうして生物相が多様になり、カンキツの害虫対策ともなるわけです。

これはナギナタガヤでの経験ですが、いったいどこから来たんだ?というぐらい狭い庭がテントウムシだらけになり、おかげで子供がよろこんでくれました。害虫対策に薬剤を使わない場合は、益虫の存在は本当にありがたいですね。

土壌の物理性改善

ヘアリーベッチが地面を被覆することで、裸地と比較した場合に、以下のような土壌の物理性改善効果が期待できます。

  • ヘアリーベッチの根や誘引された生物が土を軟らかくする
  • 土壌の水はけがよくなる
  • 土壌の乾燥を防ぎ保水性が向上する
  • 夏場の地温上昇を2~5℃抑えることで高温障害を防止する
  • 冬季・夜間の低温を緩和する

カンキツ栽培へのデメリット

果樹に巻きつく

ヘアリーベッチはつる性の植物なので、放っておくと果樹の枝葉に巻きついて、下手をすると生育や光合成に悪影響を及ぼす恐れがあります。特に幼く小さい木なら尚更です。余分な刈り込みや草倒しの手間が掛かってしまうことも考えられます。

害虫の増加

ヘアリーベッチが土壌を被覆することで、土壌の乾燥を防ぎ湿潤性が保たれます。そのことは様々な生物にとって過ごしやすい環境を整えることになり、それは害虫も例外ではありません。病原菌を媒介するハダニや、ウイルスを媒介するアブラムシ、農作物に害を与えるナメクジなど、ありがたくない害虫の温床となることもありえます。その分、テントウムシなどの益虫も増えますのでバランスはとれているものと思います。

こぼれ種から再生しにくい

カンキツへの直接的なデメリットではないものの、ヘアリーベッチは自然条件でこぼれ種から再生する確率は低いです。そのため、継続してヘアリーベッチを利用するためには毎年の播種が必要になります。管理的な手間はかかってしまいますね。

カンキツ栽培への影響がよくわからないこと

窒素過多にならないか?

ヘアリーベッチのメリットである窒素固定の裏返しですが、窒素があまりに土壌に蓄積された場合、窒素過多となる弊害が起こらないのだろうか、という疑問があります。

一般的に窒素過多だと病害虫の発生につながったり、カンキツは果皮と果肉の間に隙間ができる浮皮や、皮が厚い果実(どちらも食味が落ちる)になってしまう要因になるようです。

水稲栽培においては品種によっては窒素過多の影響で倒伏の恐れがある、という注意記載がありましたが、カンキツではそうした事例の記載がみつかりませんでした。さらに、
『ヘアリーベッチ由来の窒素は緩効性肥料のような効き方をする』
との記載があるかと思えば、
『マメ科植物の作り出す窒素は比較的速効性である』
というまるで反対のような記載もあったりで、私が調べても混乱するだけでした。こういうことは専門家に伺ってみないとわからないですね。

ナギナタガヤとの比較

期待する効果が被るナギナタガヤとの違いを簡単に挙げます。

  • [メリット]マメ科植物なので窒素固定してくれる
  • [メリット]花が可愛く景観植物にもなる
  • [デメリット]毎年の播種が必要
  • [デメリット]ツルが巻きついてしまう

私はナギナタガヤを選びましたが、幼木なので窒素の競合が起きやすいナギナタガヤよりも、窒素固定してくれるヘアリーベッチにしておけばよかったかなと、今回いろいろと調べて思いました。

効果ではなく利便性の観点においても、ヘアリーベッチの種は少量から売っていますが、ナギナタガヤの種を買おうとすると量が多く、けっこう高くつきますし、個人宅の庭では持て余してしまいます。私がナギナタガヤの種を購入したのは2018年4月でしたが、当時は1kgで3,037円(税別・送料別)でした。

ただ、ナギナタガヤにも優れた点がありますので、それは別途紹介したいと思います。

参考リンク・資料

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